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一時期、学校の怪談というものがはやったことがある。
 学校という場所には、怪談の生まれやすい独特の雰囲気があるようで、「ゴーストハント」にも、学校を舞台とするエピソードがいくつか登場する。

昼間は、大勢の子供たちの活気と歓声に満ちた学校が、深夜たまたま訪れてみると人影のない、それでいて無意味に広く、寂しげな空間に変ずるという落差も人間の想像力を刺激し、怪談を生む背景となっているのだろう。

 実際、学校に伝えられる怪談には、夜のみ起こるというものが多い。階段の段が1つ増えるとか、体育館で誰もいないのにボールが弾む、壁に飾った絵が動く、誰もいないはずの音楽室からピアノの音が聞こえるなど、大抵は夜間のこととされている。
また、赤い紙・青い紙とか、トイレの花子さんなど、校内の閉鎖空間であるトイレを舞台にした怪談も伝えられているが、現実にはそのほとんどが、一種の都市伝説であろう。

 一方、1966年10月21日、イギリスの南ウェールズにあるアバーファンで起きた、小学校での惨劇には、不思議な後日談が伝わっている。
 この日、大雨でボタ山が崩れ、大量の石炭滓が山の斜面を滑り落ちて小学校を押しつぶした。この事件では、大人16人、子供128人が死亡した。

ところがこの事件の直後から、事件を予知するような夢や光景を見たという証言が何十件も、イギリス全土から寄せられたのだ。

事件で犠牲になった少女の1人は、事件前日、母親にこう言った。
「お母さん、私夢を見たの。学校に行ったけど学校がなくて、黒い何かに覆われてたの」

アバーファンから300キロ以上離れたプリマスの教会では、事件の前夜、ある女性がトランス状態になって幻を見た。幻の中でこの女性は、山の斜面を石炭の山がすべり落ちる光景や、石炭の山に少年が埋もれている様子を見た。この女性の話にも、教会で同席していた6人の証人がいる。

超心理学者の中には、これらの人々は、夢や幻の形で、アバーファンの事件を予知していたのではないかと考える者もいる。


参考:Hans J.Eysenck, Carl Sargent『Explaining the Unexplained』Prion
    JOURNAL of the Society for Psychical Research Vol.44 No. 734
    常光徹『学校の怪談』ミネルヴァ書房
    松谷みよ子『現代民話考[第二期]学校』立風書房

    
    

羽仁 礼 PROFILE

島根大学卒業。少年時より超能力や死後の世界などの不思議な現象全般に関心を持ち、 長じては世界を放浪して数々のミステリー・スポットを実際に踏破。 現地調査に基づいた独自の研究を続けている。 著書に「超常現象大辞典」(成甲書房)、「図解近代魔術」(新紀元社)ほか。   



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(C)小野不由美・いなだ詩穂・講談社/「ゴーストハント」製作委員会