オーストラリアと日本とを仕事で行き来する日々を送っていたプロデューサーは3年前に、メルボルンの芸術学校VCAの音楽科に通う女の子と出会い、ユニークな学校生活の話を聞いた。入学すら難しい超エリートでありながら、留年が許されず、多くの生徒は「間引き」と呼ばれる強制退学を恐れて日々必死で勉強しているという状況を知らされた彼女は、この現実を映画にできないかと模索。当時VCAに通い映画製作をしていた学生の中から、独特の色彩感覚と映画製作に欠かせないさまざまな才能を合わせ持ったギャヴィンに監督として白羽の矢を立てた。
当時2年生だったギャヴィンは、急学を決意し来日。活動の拠点をオーストラリアから東京へ移し日本人との交流をはかった。そして海外留学を希望する人に“学ぶことの難しさ”を知って欲しいという思いで本作の脚本に着手。半年後に完成した脚本は、リアリティに満ちた“学生たちの今”を切り取ったものとなった。
2005年9月22日、日豪合作映画『Academyアカデミー』クランクイン。撮影開始の2週間ほ ど前から、現場を勉強したいとの理由で現地入りしていたのは高橋マリ子。8歳までアメリカで暮らし、バイリンガルの彼女にとってメルボルンでの撮影生活は何の問題もないと思っていた矢先、彼女の相手役「マシュー」のキャスティングでひと波乱。現地で決定していた役者がイメージに合わないということから、急遽キャスト変更になってしまった。人材のシューティングまで約10日間。高橋マリ子自身も街中でスカウト活動をするなど、慌ただしい現場は、かえって本作のイメージを掻き立ててくれるきっかけになった。杉浦太陽をキャスティングしたのは、日本滞在中のギャヴィン自身。これまでの杉浦のイメージをくつがえすようなハードな役柄に、当初は難色を見せていた彼も、現地スタッフからの熱いラブコールに応える形で合流。どこか中性的でセクシャルな主人公・隆を体現したキャスティングとなった。
VCAの教室を使い、教師や生徒たちの協力のもと撮影完了。キャラクターを奥深く追求する監督は、過酷なカリキュラムと厳しい選定の中にあっても、表現することの素晴らしさと開放感を役者ひとりひとりに、その都度味わせる演出を心がけていたという。