INTERVIEW 社員インタビュー
今、そこにある“革命前夜”の空気感
デザイナー/スペシャリスト
ビジュアルで語ることの強さ
主に、コンシューマゲームのアートワーク全般を見るのが、私の仕事です。企画書にフラッシュアイデアが数行あるだけという段階から入るので、まずクライアントやディレクターからヒアリングすることからスタートします。
描きたい世界観は、西洋的なファンタジーなのか? 未来的なSFなのか? それに合わせたキャラクターなどを具体的に3D化することから入ります。俗に言う「コンセプトアートを起こす」という作業です。ビジュアル化することで、言葉や文字で伝えるよりも、その世界観を正確にチームスタッフと共有できるんです。
さらに進化させたイメージ共有法
この手法はさらに進化させて、今でも続けています。コンセプトアートワーク段階では、クライアントやディレクターからの抽象的なリクエストが多いので、よりリアルにグラフィック化できれば、イメージの共有がとてもはかどります。コンセプトモデルを大方仕上げていき、会議の場で上がったクライアントやディレクターのリクエストに、ZBrushやKeyShotなどのツールを使って、一気に質感やライティングを変更して違うデザインをプレゼンテーションします。こうして、できあがりのイメージを共有し承認をもらったモデルデータは、そのままゲーム制作で活用するリファレンスデータになっていきます。
まだまだ日本では、コンセプトアートを固める際、まず2Dのデザインを決め、それを基にモデラーが3Dデータ化して完成に導くフローが多いと思うのですが、その後、クライアントやディレクターが望むイメージとの差を埋めるために、多くの試行錯誤が行われているはずです。この方法だったら、最初にクライアントと共有したイメージをそのまま制作現場のスタッフとも共有できるので、試行錯誤に使っていた時間を作品の完成度を高めるために割くことができるんです。過去の事例としては、『GOD EATER 3』の公式サイトで、アップデート予定のモンスター紹介画像にこの手法でつくったリファレンスデータが使われました。
互いに刺激を与えあえるチーム
マーベラスでの印象的な仕事は、『SOUL SACRIFICE』でコンセプトアートを担当したことです。マーベラスの前身であるAQインタラクティブ時代から、キービジュアルやコンセプトアート関連を担当していたのですが、会社が合併したことで、これまで関わりのなかった他ジャンルや他タイトルの開発スタッフと合流することができたので、非常に刺激を受けました。個々で優れた才能を持つ人材がミックスされることにより、化学変化のようなものが起きて、「このチームなら新たなものを目指せる! もっとすごいものがつくれる!」と興奮したのを覚えています。
憧れのクリエイターの言葉で覚醒!
『SOUL SACRIFICE』は、稲船敬二さん(※カプコンで『ロックマン』などを開発)がコンセプトCEOを務められたという点も大きかったです。小学生の頃に夢中で遊んだゲームを手がけた、私にとっての憧れの人と一緒に仕事ができたんですから。クリエイターにとっては夢のようですよね。稲船さんがそのときにおっしゃっていた「人間の内面をえぐるような、本能に突き刺すようなゲームをつくりたい」という言葉は、今でも強く印象に残っています。
制作現場では、その言葉を受けてイメージビジュアルをつくるんですが「もっともっと! 過激にやっちゃっていいよ!」とアドバイスを受けました。そこで、私自身も「もっとやってもいいんだ!」と気づいたんです。その稲船さんの言葉が、それまでの経験から知らず知らずに形成されていた“私の中の常識の枠”を外し、アーティストとして、クリエイターとして、覚醒できたと思います。
これからはコンシューマゲームが熱い!
今、私が夢中になっているのは、Unreal Engineです。4から5へと、今後さらに表現の幅が広がる期待感があります。PlayStation®5などの次世代ハードの進化も絶妙のタイミングで訪れたこともあり、2021年後半あたりからは、これまでとは次元がまったく異なるような、すごいゲームが生まれてくると思います。過去、同じような業界のターニングポイントで感じた、ワクワクするような“革命前夜の空気感”が、再び業界に充満しているんです。ここ数年、コンシューマゲームは携帯ゲームに押され気味でしたが、これからはコンシューマが再び熱くなりますよ!
“カッコ良さ”を共有したい
Unreal Engineをはじめ、各種3DCGツールは、映画などゲーム以外の分野でも使われています。そして、それらを使いこなしていたそれぞれの業界のクリエイターが今、まったく違う業界に行って化学反応を起こしているんです。ゲーム業界で活躍していたクリエイターが、映画業界に行って映画をつくっているなんてケースも出てきています。もちろんその逆もあります。業界の垣根を越え、凄腕ゲームクリエイター足りえる人材が、世界中に溢れています。
海外では、そういう人材のポートフォリオとして認知されている「Artstation.com」というサイトがすでにあります。私個人のワークとしても、時間があれば掲載されている作品をチェックして、“世界の流行”や“技術の最先端”に刺激を受けています。機会があれば、そこで作品を発信しているフリーの凄腕のアーティストたちとプロジェクトを共有し、“カッコ良さ重視”のグラフィックアートを追求したいですね。そんな、ちょっと変わった制作スタジオがあってもいいじゃん、と思うんです。一緒にコンシューマゲームの未来を熱くしていきましょう!
©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
PROFILE
Hiro
2007年にコンセプトアーティストとして入社。新規タイトルの立ち上げ時から関わり、新しい表現プロセスを取り入れるなどのチャレンジを継続中。
- ツール
- Unreal Engine、ZBrush、Substance Painter